現代の日本の農業において、深刻な問題となっている「高齢化」や「人手不足」。昨今では、機械の力を借りて人手不足を解消し、生産性アップを目指せる「農業ロボット」が登場しています。このメディアでは、農業の課題解決を目指す方のために、農業に関するロボットテクノロジーや開発企業、作物や課題、技術ごとの農業ロボット情報をご紹介します。
人々の生活に欠かせない一次産業のひとつ、農業。しかし、現代においては高齢化による「人手不足」や、戦後の食生活が欧米化したことでその変化への対応が難しく、年々「自給率の低下」を引き起こしていることなどが問題となっています。そこで、その課題を解決するために適した方法として注目されているのが「スマート農業」です。スマート農業は農業ロボットやドローン、AIなどを用いて作業を効率化する方法で、機械を自動化すればその分を他の作業に回したり、人手不足の解消に繋がったりというメリットがあることから、更なる生産力アップも期待できます。そのため、近年では大手からベンチャーまで様々な企業が、農業ロボットの開発をはじめとするスマート農業に取り組み始めています。
「日本の農業を楽しくする」収穫ロボット
農業ロボット導入の費用
農業ロボットは搭載機能により、導入コストが数十万円から数千万円と大きな開きがあります。機能がシンプルなロボットであれば導入費用が安い分、手作業が多くなり負担が増えます。そこで、近年ではRaaSモデルが登場。リース契約で必要な時期だけレンタルできるため、初期費用がかからず、メンテナンス費用も発生しません。利用料として収穫量の一部を支払うため、まとまった費用を捻出できない場合でも導入できます。
農業ロボットの補助金
農業ロボットの導入時は、各種補助制度を使うと導入コストを抑えられます。たとえば、農地利用効率化等支援交付金の先進的農業経営確立支援タイプの要件を満たす場合、法人は上限1,500万円、個人は上限1,000万円まで助成。園芸作物転換強化事業なら水田地帯から園芸作物の転換で、機械のリースに対しても補助金が交付されます。借上費の2分の1以内の補助金が交付されるので、導入費用を抑えることが可能です。自治体によって実施している制度や内容は異なるため、事前に確認しておきましょう。
農業自動化のメリットと課題
農業自動化により、作業能率が上がり、作業負担が軽減されるメリットがあります。高齢化で作業に限界を感じていた農家も続けやすく、労働環境の改善で若い担い手の確保に期待が持てます。また、ロボットの導入で人件費が抑えられ、農地拡大も検討できるでしょう。ただし、農業ロボットの導入には費用がかかるため、補助金の活用やRaaSモデルを検討するなど、導入コストを抑える取り組みが必要です。
生産者にとって収穫作業は、作物の品質を左右する大事な作業である一方で、負担が大きい作業でもあります。出荷のピーク時には、作業が早朝から始まり深夜に及ぶことも少なくありません。多くの生産者が抱えている課題を解決する収穫ロボットを、作物別にご紹介します。
キャベツはひとつひとつ異なる角度で地面から生えています。そのため、手作業では切り込みを入れる角度を変えるなどの手間が必要でした。このように、キャベツは稲作などと比較して単位面積当たりの労働力が多く必要な作物です。従事者の不足、高齢化に悩むキャベツ農家も少なくありませんが、新たな労働力の確保は大変難しい課題となっています。
ほうれんそうは柔らかく茎や葉が容易に折れやすいため、傷つけずに収穫するのは人手でも難しいとされます。しかも、出荷までに必要な全作業のほとんどを収穫調整作業に割かれるため、人の手を多く要する品目です。作業はしゃがんだ姿勢で長時間行うため、身体への負荷も大きく、機械導入による作業負荷の軽減が期待されています。
生産者1軒辺りの栽培面積が拡大しているだいこん。重量があるため収穫作業に負担がかかることから、さらなる省力化や効率化が求められています。腰をかがめて一本一本引抜き、葉を落としてコンテナに積み込むことを考えると、だいこん収穫機1台の導入でこれらの作業が楽になり、スピーディになります。
生産者1軒辺りの栽培面積が拡大しているだいこん。重量があるため収穫作業に負担がかかることから、さらなる省力化や効率化が求められています。腰をかがめて一本一本引抜き、葉を落としてコンテナに積み込むことを考えると、だいこん収穫機1台の導入でこれらの作業が楽になり、スピーディになります。
ハウスなどの施設で行われることが多いトマトの栽培。しかし他の作物と同様、深刻な労働力不足により収穫ロボットによる作業の自動化が急務となっています。収穫にかかる時間は、全体の20%以上を占めると言われています。これを収穫ロボットによって自動化できれば、労働力不足の解消とさらには農業従事者が増えるきっかけになるのではと期待されています。
アスパラガスは成長が早く収益性が高くため、栽培面積を増やしたい農作物です。しかし規定の長さより成長してしまうと出荷できなくなるため、収穫は毎日行う必要があり、人手不足によって栽培面積を増やせないという課題があります。そのためにアスパラガス収穫ロボットが一般販売されれば、収穫の問題がほぼ解決することが期待されます。
生食用の葉ねぎ(根付きねぎ)は、家庭消費の伸び悩みにより市場価格が不安定となっています。ねぎ産地では、1回の定植で収穫・再生を繰り返して3回ほど繰り返せるため、加工・業務用葉ねぎの契約栽培に取り組む農家が増加傾向にあります。どちらの収穫方法にしても、葉ねぎ栽培では収穫・調整作業に全作業時間の3分の2以上を要すると言われています。
はくさい生産の抱えている課題は、何と言っても重量と大きさのある収穫です。重労働である収穫の課題が解決できなければ、栽培の拡大がままならず収益を上げることができません。そこではくさい収穫機の導入により、大幅な人員削減と作業の負荷が減少すれば、経費が削減できるだけでなく、栽培面積を増やすことにつながります。
ピーマンの栽培はほとんどがハウスで行われています。ピーマンに限りませんが、農家の高齢化により収穫の労働力不足が原因で収益率が下がるという課題を抱えています。そのために人に代わって自動収穫できるロボットの導入が急務となっており、収穫の自動化が実現できれば、人件費の削減や収益の向上につながると考えられます。
枝豆は手作業でもぐと、時間と労力がかかります。収穫適期が3~5日間と短いため、作業負担が一時期に集中するという課題があります。味の良くなるタイミングを逃さないためにも、限られた人数で作業負担を解消できる省力機の導入を検討すべきでしょう。作業能率をアップできる収穫機を導入すれば、一台で収穫から脱莢までできるため、収穫作業が楽になります。高さの異なるうねや軟弱圃場にも対応できる収穫機を選ぶと、条件が異なっても即座に対応することが可能です。
レタス生産者のなかには、人手不足に悩む方が少なくありません。レタスの収穫は季節労働のため、冬季の仕事をつくらないと、特定技能外国人の受け入れは難しくなっています。また、短期間の技能実習生についても、コロナ禍で希望者が少なくなり、確保が困難な状態が続いています。省力機械を導入し、少ない人数でも対応できる環境や、日本人が応募しやすい環境を整えることが大切です。
ブロッコリー生産は、生育にバラつきが生じやすく、抜き取り収穫にかかる時間が課題となっており、複数名の労働者が必要です。従来の手作業での抜き取り収穫から、機械を導入した一斉収穫に切り替えることで、大幅に作業時間が短縮するでしょう。
みかん生産者は、繁忙期に早朝から深夜まで収穫作業に追われます。水はけが良く、みかんが生育しやすい急斜面での作業は重労働になるため、人手不足に悩んでいる農家は少なくありません。特に、長期化するコロナ禍でアルバイトなどの希望者が少なく、人材を確保できないみかん農家が増えています。
りんごを生産するには手間ひまがかかるため、労働負荷が大きくなる傾向があります。外観を向上させるために果実を回転させて日に当てたり、一つひとつ傷がつかないように収穫したりと時間と労力が必要です。特に、収穫時には熟度を見極める必要があるため、作業を省力化しづらいという課題を抱えています。
ぶどう生産者の多くは、収穫作業にかかるコストや時間に課題を抱えています。手摘みをする場合、一房ずつ収穫しなければならないのでかなりの労力を要します。人手をかけすぎると人件費が跳ね上がり、反対に人手不足になると収穫に時間がかかり品質に悪影響を及ぼす可能性も。
いちごは収穫作業に手間を要するため、高齢の農家が体力の限界で引退するケースが少なくありません。出荷ピーク時には深夜から収穫作業が始まり、パック詰め作業が終わるまで丸一日作業時間を要するケースも。いちごの生産を続けていくうえで、人材の確保や作業の効率化が大きな課題となっています。
くりは、イガと実を火バサミで一つひとつ収穫するため、中腰で長時間作業が必要です。高齢化が著しく、中腰での作業に限界を感じる生産者は少なくありません。特に、くり生産においては、品質や収穫量を保つための園地管理が大切です。なかには、人手不足により収穫量が安定しないと頭を抱えているケースも。
農作業には、耕うんから種まき、水やり、除草、収穫、搬送、箱詰めなど様々な工程が存在しますよね。そして、実はそれぞれの作業ごとに農業ロボットが登場しているのです。ここではそんな農業ロボットの実態について、工程に分けて探っています。
農地を整え、作物を植えられる状態にする耕うん。トラクターをはじめとする耕うん機を使用するのが主流ですが、昨今では自動走行が可能な農業ロボットも出ています。しかし、実は機能は自動走行だけではないのです!一体どんなものがあるのか?詳しく見てみましょう。
直播(じかまき)・育苗(いくびょう)・定植(ていしょく)も、農業ロボットによるスマート化が進んでいる工程。特に種まきロボットは様々な研究が進んでおり、ドローンによる作業も注目されています。では、どのようなロボットが出ているのか、詳しく見てみましょう。
植物が実をつける上で欠かせない受粉。しかし、人の手でやると1つ1つ丁寧に花粉を付けなければならず、かなりの負担になることも。そこで昨今では、受粉を助ける農業ロボットも登場しているようです。どのようなものがあるのか、会社ごとにまとめました。
農業における水やりは、基本的には毎日、場合によっては1日に何度も行わねばならない重労働。かといってスプリンクラーのような装置は量の調整が難しいですよね。しかし、こちらに関しても負担を軽減してくれる農業ロボットが登場しているので、詳しく見てみましょう。
作物の成長を妨げる雑草。除草・草刈作業は手間がかかるものですが、健やかに育て上げ収穫するためには必要不可欠です。では、そんな除草をラクにしてくれる農業ロボットは存在するのか?というと、比較的手が届きやすい価格で開発されていることが分かりました。
雑草や害虫から作物を守るため、農薬散布も必要な作業。しかし、農業ロボットに任せるのは分量や作物への影響が不安、という方もいるのではないでしょうか。そこで今回は、既に開発されている農薬の散布ロボットについて、その実用性やポイントなどをご紹介しましょう。
実った作物の収穫作業は、やりがいもあれどなかなか骨が折れるもの。特に繊細な野菜は丁寧に行わなければ傷ついてしまうため、気を遣いますよね。しかし、収穫は比較的スマート農業に切り替えやすい工程という話も。そこで今回は、収穫を代行する農業ロボットを詳しく調べてみました。
大きい野菜、重い野菜の運搬は、作業者が高齢の農家等だと特に大変です。そのため、昨今では自動で作物を運搬できる農業ロボットが登場。しかもルートをプログラムすれば覚えてくれる上、障害物も避けられると言いますが、本当なのでしょうか?追求してみましょう。
収穫・運搬が終わったら、出荷前に選別作業が必要。サイズや色、傷がないかなどを見て、市場に並べられる商品かを判別します。しかし、これはスキルも関わってくるため、人員確保が難しいところも。そこで最近では、データを基に細かく選別できる農業ロボットも導入されています。一体どのようなものなのか、詳しく見てみましょう。
出荷の際は箱詰め作業がありますが、作物によっては包装・袋詰も必要となります。特にレタスや果実など傷つきやすいものは慎重にしなければならないため、人の手でやりたいという方も多いかもしれません。では、近年開発されている農業ロボットはどこまで配慮されているのでしょうか?
農業ロボットと一口に言っても、機能や大きさ、形状などはさまざま。作っている作物や目的に応じて、その農家に合った製品を探さねばなりません。特にトラクターやコンバインなど、大型の「高性能農機」や、障害物を避けるための「センサー」などはどのような機能があるのか?と悩みがち。そこで今回は、テクノロジーごとの違いや製品事例をご紹介しましょう。
高性能農機とは、一般的にトラクターやコンバイン、ハーベスターなど比較的大型で、かつ高い性能をもつ農機のことを言います。しかし、それぞれに用途が異なる上、物によっては併用もできるため、どれが必要なのか悩みがち。そこでここでは、各高性能農機の違いを説明しつつ、実際に導入されている製品もまとめました。
センサーといえば、遠くから何かを検知するもの、というイメージ。農業ロボットにおいては一般的に障害物を避ける目的で使用され、(赤外線)レーザーセンサーと超音波センサーの2つが存在します。では、それぞれにどのような特徴があるのでしょうか?実際の導入事例も含めご覧ください。
現代における日本の農業は、主に「人手不足」や「自給率の低下」といった課題を抱えています。後継者がいなくて困っている、人を雇いたいけれどなり手がいない、人件費が厳しい、思うような収穫量が見込めない…など、様々なお悩みをもつ農家さんも多いでしょう。ここではそういった問題について切り込み、解決策をご紹介しています。
日本の農家の人手不足は、主に少子高齢化や農家の雇用問題(通年で雇うことが難しい)などの理由があると言われています。しかし、いずれもすぐに何とかするのは難しい問題。そこで今回は、スマート農業を視野に入れた人手不足解消の方法について、一緒に考えてみましょう。
国内の食糧をどれだけ国産でまかなえているか、を指す食料自給率。日本は戦後から急速に食生活が欧米化した結果、農業がそれに対応しきれず、年々自給率が下がり続けていると言われています。では、自給率の低下を防ぐにはどうすれば良いのか。農業ロボットの活用もふまえ、方法を検討してみませんか?
農業ロボットを開発・製造しているのは、実は農機メーカーとしてお馴染みの大手企業だけではありません。ITをメイン事業としたベンチャー企業にもスマート農業は注目されており、様々な企業や自治体とタッグを組んで新たなマシンの開発に臨んでいます。ここではそんな農業ロボットの製造メーカーについて、詳しく解説してみました。
井関農機は、1926年創業の老舗農機メーカー。高性能なロボットトラクターをはじめとする農業ロボットはもちろん、他社と協力しての抑草ロボットの開発も手がけています。
日本でも代表的な農機メーカーとして知られるクボタ。高い耐久性と手厚いアフターサポートが魅力で、海外でもシェアを広げています。
日本ニューホランドは、海外企業であるニューホランド社の国内総代理店。北海道自動車工業を前身としており、低燃費かつ高精度な農業機器が強みです。
ヤンマーアグリジャパンは、全国的に支社を展開するヤンマーの製造子会社。農業ロボットの販売も手がけ、ヤンマー製品を幅広く取り扱っています。
パナソニックは日本の電機メーカーとして知名度の高い会社ですが、実は農業ロボットの開発も行っています。施設園芸向けのクラウドシステムも提供しており、スマート農業に積極的な姿勢です。
アグリストは、宮崎県新富町を拠点とするロボット開発企業。きゅうりやピーマンの収穫ロボットを中心に、グローバルベンチャーを目指して真摯に研究に取り組んでいます。
デンソーアグリテックソリューションズは、有名な自動車部品メーカーデンソーが、オランダの施設園芸事業者に出資して設立されました。主にハウス栽培のサポートを行っており、コンサルティングに関しても細やかに相談に乗ってくれます。
次世代の移動ロボット開発をメイン事業とするDoog(ドーグ)。搬送用農業ロボット「メカロン」を中心に、様々な業界に対応できる機器を手がけています。
個人・法人を問わず生産者向けサービスを提供しているinaho。農業ロボットの開発はもちろん、農業参入コンサルティングにも対応している会社です。